夏、涼しく過ごすには、どうしたらいいと思いますか?
--- 「涼しいところに住む!」
--- 「風通しをよくする」
--- 「水をまきます」
--- 「日ざしをふせぐっ」
--- 「暑い空気をためない」
--- 「涼しさをたくわえておく」

そう。いわれてみれば、アタリマエ。
で、ここはひとつ、このアタリマエだった生活の知恵こを思い出してみましょう。 今では、クーラーに頼りすぎで省みられることが少なくなりましたが、
実はこれが、すぐれもの快適テクなのです。

 

       
 
  「わが家」でできること

涼しく過ごすには、ほんとうは、暑い都会を涼しくすればいいんです。 同じようにそれぞれの建物も、熱気というストレスを貯めないような工夫をすれば、わが家も「避暑地」状態。 「夏、すずしく過ごす」家づくりの工夫は、みんながやっぱりそう思ってるだろう、アタリマエのことから。

 

 

日除けをつける

 

         
   

今は、カーテンやブラインドを窓の内側につけることが多いですが、ほんとうは、日よけは窓の外につけるほうが、格段に効果的なんです。
日本では、すだれ(簾)。ヨーロッパでは、オーニング(布庇)です。
日よけを室内に付けた場合は、結局日射の熱を室内に呼び込んでしまうため、50%程度までしか日差しの熱をさえぎれません。室外に日よけを付けた場合は、日射の80〜90%程度までさえぎることができます。「外壁の覆い」や「木陰」のお話と同様、外に吊った日よけ表面で熱を逃がしてしまうからです。すだれなどを、内につけるのと外につるすのとでは、室内温度は5〜7℃違います。(写真)

 

すだれを、 部屋の外と 内に
吊った時の、温度の違い

真ん中が外に吊った窓面29.3度
右が内側に吊った窓面、36.5度
   

ルーバーや庇なども大切。
太陽からは、直射光と空全体からの輻射光(天空日射)で熱がやってきます。その他のたとえばお隣の屋根や壁からの輻射熱もやってきます。でも輻射熱は、ガラスを透過しません。知ってましたか?
つまり、直射光や空全体からの輻射光を、窓の外で庇やルーバー・すだれなどの日よけでさえぎりさえすれば、室内に天からの熱は入ってこない仕掛けになります。
もちろん外気温の伝導は、日よけでは防ぐことはできませんが、断熱材をしっかり入れておけば大丈夫。断熱効果は、冬の寒さ対策だけではないのです。
また、家の廻りの外気温の上昇は、木立などによる微小気候をつくり出すことで抑えることがでます(下出「木陰が活きる」で解説)。ここに、しっとりした地面があれば、あなたの家はもう山荘気分ですね。

 

   
 

暑い空気を外に出す

 

       
    暑い空気は上昇します。立ち上って熱だまりになった暑い空気をうまく室外に出す工夫が大切。これは、旧来の民家でも工夫されていたことです。
もし部屋の天井が水平だったら、暖まった空気はその部屋の天井全体にまんべんなくただよい、その熱気のかたまりからの放射熱で体感温度は高くなります。まずは、天井に傾きをつけて、熱気が昇りやすくするといいですよ。そして、斜めの天井を昇っていった熱気が、うまく外に出ていくような高窓や換気口などをつけることです。

   

一方、天井が平らでも、天井裏の熱気をじょうずに出す工夫があれば、たいへん涼しくなります。こんど天井を手で触ってみてください。その工夫のない場合、天井板自体が熱を保っているのがわかります。そうすると部屋の温度をクーラーでいくら下げても、頭上の天井板からの放射熱で、いっそう体感温度を高く感じてしまっています。

   
   
こういう場合は、ぜひ換気棟をおすすめします。既存の木造住宅でも安価で簡単に設置できます。屋根の最頂部に切り込み穴を開けて、台風でも雨漏りしない専用の既製品部材を取り付けます。こうすると屋根裏の気温は、ほぼ外気温程度になりますので、過ごしやすくなりますよ。またこれは、冬場の屋根裏の結露防止にもたいへん効きます。イチオシです。

換気棟 切り込み穴施工中

換気棟専用既製品部材
取付後

 

 
 

涼しさを蓄えておく

 

       
   

石やコンクリートなどの「ずーっと熱くて冷めにくい」材料は、暖めさえしなければ逆に冷たさを保ち続けてくれます。 すこし技術的に言えば、比熱の大きい材料は、熱しにくいけど一度暖まると冷めにくい、 逆になかなか冷えにくいけれど一度冷たくなるとしばらく冷たい、 ということです。
この性質を利用して、室内の気温を整えることができます。
冬場も暖かさを蓄えるということができますが、夏の暑さ対策としては、地中の冷気や夜間の冷たい空気で、基礎コンクリートや土間の石材を冷やしておくと、昼間の冷気の供給源としてたいへん貴重です。 熱気を上に昇らせて、その代わりに床下や土間のヒンヤリした空気を室内に引っ張ってくるという工夫は、民家や京都の町屋で利用されています。現代でも、利用しない手はありません。
ただ、注意したいのは、床下にシロアリ駆除剤や木材防腐剤を使わないこと。薬剤を室内に引っ張ってくることになりますから。それらの薬剤の代わりに、床下に充分な通風を計画する必要があります。また、調湿炭を敷くということも、いいですね。なんでもかんでも、人工のエネルギーや合成化学物質にたよらないほうが、ムリがありませんよ。

 

 

   
 
  わたしたちの街のこと

ヒートアイランドって、知ってます? 都会が、アスファルトやコンクリートで覆われて、夏の太陽熱をどんどん貯め込むもんだから、中にいる私たちはガンガンにクーラーを回して熱を外に吐き出します。そしてその出した熱が、さらに都会の温度を上げてしまい、郊外に比べて高温の島のようになってしまっている現象のことです。クーラー以外の他にもいろいろ原因が重なり合っていますが、どっちにしても、暑苦しくって、タマリマセン。

昔は、暑くてすごしにくい場所には暮らさず、涼しいところへ居を構えたもんです。たとえば、風通しのよい丘の上とか、風の抜ける小川や谷間、緑豊かな森なんかに。今は、そうもいかないけど、どうするの?  
  …そういう街にすればいいんです。

 

お日様にさらさない

 

       
   

アスファルトやコンクリートは、熱を貯めやすい性質です。 これを、お日様にさらさない工夫をする。
たとえば、外壁に覆いをつける。植物なんかを這わせるのが、グッドなんですが、直接這わせると本体を傷めやすくメンテがし難くなるので、何か独立した骨組みをつけるといいのです。屋上緑化というのも良さそうですが、いつかくたびれる防水層の取替は困難になります。 植物を這わせないまでも、熱しやすく冷めやすい材料(金属等の)で、日かざしをつけても効果的。一番かんたんなのは、ヨシズやスダレで覆うこと。

なぜかというと、日かざしが高温になればなるほどその付近の空気が熱せられて上昇し、比較的低温の空気がその分舞い込むので、熱をどんどん逃がします。空冷式のラジエータの形になるわけ。
ココに、水分を持つ植物やさらに散水などをすると、水冷式のラジエータになって、さらに性能アップ。 外壁の覆いは、日中すごく熱くなっても、後ろの壁との空間が熱をシャットアウト。その上、覆いは、いくら熱をもっても日が暮れたらすぐ冷めますが、モルタルやコンクリートの壁や屋根に日射を直接当ててしまうと、いつまで経っても熱を貯め込んでしまって冷めません。熱の固まりの中で、家中クーラーブンブンという図式になってしまいます。

 

   
 

しっとり舗装にする

 

       
   

「道路のあっついアスファルトは、どうするの?覆えないじゃない。」
そうですよね。道路をすべて芝生仕込みにすれば、気持ちは良さそうだけど。でも、そうもいきませんね。
日射を受ける真夏のアスファルトの路面は、芝生面より何と10度以上も高温になります(写真)。
でも、道路を芝生にする代わりに、道路の舗装をいつもしっとりとして湿った状態にできれば、朝から強い日差しを浴びても「打ち水」をしたように、水の気化熱で路面温度はそんなに上がりません。私たちの街を、草原に暮らすのと同じような環境にすることができるのです。 大阪市では1999年夏から実証試験をしていますし、ゼネコンさんでもしっとり舗装が開発されたりしています。


真夏日の公園のアスファルト
舗装表面を計ると44.8度
周囲の芝生は、32.6度
 
   

ただ、その水をどこから引いてくるのかが、考えどころ。ただでさえ、夏場の水不足は深刻なのに。今、公で考えられているのは、雨水を貯めて使うこと。でも、それではおそらくすぐ枯渇してしまうでしょう。そこで、提案したいのが、雑排水の敷地内浄化。
現在の下水道法下では、公共下水道がある地域では、雑排水は下水道に放流しなければなりません。しかし、私たちの使った生活排水を身のまわりの土壌に一度もどしてあげれば、浸潤してくる水を道路端の側溝に集めて、しっとり舗装に利用できます。
敷地内浄化を技術的に管理して利用すれば、土壌が生き返り、植生が豊かになり、微気候が生まれ、風がそよぎ、雲が湧き、雨が恵まれます。 私たちの暮らしが、自然の負荷になるのでなく、周りの環境を豊かにできるのです。(→雑排水の敷地内浄化は、別の機会に紹介します)

 

   
 

木陰を活かす

 

         
    あたりまえかもしれませんが、木陰は涼しい。
なぜ、木陰は涼しいのでしょうか。
「外気温は一定ではない」というのが、ポイントです。数mのはなれでも、気温にムラができています。たとえば、樹木のまわりについて考えてみましょう。木の日当たりの部分で、空気は暖められ上昇します。昇って行った空気の代わりに、地表付近のそれより低い温度の空気が引き込まれます。地表は、日差しがさえぎられ水分を蒸発させていますので、低い温度の空気を供給してくれます。木立周辺にはそよ風が起きて、涼しさを増します。もちろん体感温度では、日射や地表の照り返し、そよ風のあるなしが影響しますが、木陰では空気温度だけでも5℃程度は下がります
 

 

木立はただ日差しをさえぎってくれるだけでなく、なにもなかったところに、上昇気流とそよ風を運んでくれるんです。木立は、微小気候をつくりだす、大切なしくみということができます。
敷地にゆとりがあれば、木立で家を覆いますと、木は天然のラジエーター。それだけでクーラーは要らなくなります。それができなくても、北側の木陰の冷気を室内に流入させる工夫は、お勧めですよ。

 

   
 

風通しのいい街づくり

 

       
   

風通しを考えた都市計画なんて、あんまり聞いたことない?
でも、日本には風を防ぐつまり防風の街づくりとかは、季節風の強い地方に伝統的にありますよね。現代でも、防風林などは高層ビルの風害を和らげるために利用されています。 だから、積極的に季節風や地域の風向き、あるいは水場や緑のゾーンに向けて風が通るように、少なくとも風通しを妨げないように建物を配置する。そして、その風通しに向かって風を家の中に導く家づくりをすれば、熱気が町中にこもってしまうなんてことはないのです。
実は、こういう風のデザインは、かつてはスーパーコンピュータでないとできなかったのですが、今やパソコンレベルでも充分解析ができる時代。だから、みんなの同意さえあば、風通しのいい快適な街が実現できるんですよ。 ドイツのシュツッツガルトは、山から吹き下ろす風の通り道を考えて、街並みをつくっている好例です。 賛成してもらえる人が集まって、共同で土地を買い「わが家」を建てることもできます。コーポラティブハウジングならぬ、コーポラティブ戸建。土地を見つけたら公募しますので、ぜひ参加してください。

 

   
         


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