先行モニター
断熱工法と換気種別

最近の家づくりでは、健康志向や快適性への提案として、断熱、省エネ、換気、通気といった室内環境関連のことばを冠した工法や装置が多くなりました。その意味を知り、ことばに惑わされずにあなたにあったしくみを見つけてください。
 


高気密高断熱住宅

 
 
地球温暖化対策や住宅の性能規定化という世の流れを受けて、平成11年に告示された次世代省エネ基準により、住宅の断熱方法の基本が国により提示されました。省エネのためには断熱遮熱性を高めようというものですが、この基準では単に断熱性能だけを高くするだけではなく住宅の気密性についての規定も盛り込まれています。
これは、
(1)断熱性能を上げるためには断熱材中の空気の通り抜けを防ぐ必要があること、
(2)断熱性を上げるほどに断熱材の気温の低い側が結露して骨組みを腐らせる弊害がおきやすいこと、
(3)すきま風が多いとエネルギーの漏出が防げないこと、
(4)室内の換気をコントロールする必要があることなどを、目的としているためです。
つまり断熱性は住宅の気密性と表裏一体の性能であることを、この基準は示しています。そしてこの基準に則ってこれまでの断熱気密の水準の住宅から区別するために、<高気密高断熱住宅>と呼ばれるようになりました。

ただ<高気密>ということばだけがひとり歩きしてしまったようで、ビニールハウスやペットボトルのような息苦しい住宅、風通しが悪いのでダニが出やすい不健康な住宅などと誤解されやすい(> FAQので、最近では<高性能住宅>と呼ばれることもあります。

ことばの好き嫌いはともかく、冷暖房をする家で断熱材を入れるのなら断熱材は一部だけとか隙間だらけで用いても、効果が薄くかえって家の耐久性に悪影響があります(> 断熱 > 結露。断熱材を充分入れ、きちんと気密性も確保すれば、家中が片寄りなく暖かく涼しい家となり換気効率も上がり、湿気やダニとは無縁の家ができるのです。
また、高気密高断熱住宅あるいは高性能住宅といわれる家づくりの方法は、暑さ寒さの程度について数字でそのレベルがわかり、冷暖房費を推定する方法も提供してくれます。今や漫然と冷暖房費を使ってしまう時代ではないとお考えなら、高気密高断熱が家づくりの基本性能となるでしょう。
 
 
外断熱工法
 
   
断熱材を、柱梁などの構造躯体の外側に貼って、建物全体をくるむ工法のこと。これに対して柱梁などの間に挟み込む工法を<軸間断熱><充填断熱>工法といいます。

外断熱工法は、断熱材と気密層が躯体の外側にあることがいろいろな長所を生み出します。断熱気密工事が比較的簡単にできること。断熱材が躯体を保護しているので断熱がうすい部分(熱橋;ヒートブリッジ)が少なくてむこと。また熱的に囲われる容量が増えるので蓄熱量を増やしやすいことなどです。ただ残念ながら断熱材単価が高く結果的に建築費が割高になること、軸間より断熱材の厚みに限度があることなどは短所です。

外断熱工法を売り文句にしている工務店がありますが、外断熱は、省エネ基準に規定されている高気密高断熱住宅のひとつです。どこか建材メーカーの提供する一式工法のフランチャイズ工務店でないと出来ない工法ではありません。フランチャイズ工務店が増えているのは、外断熱の施工がマニュアル化され工事が比較的簡単で、温熱環境計算もフランチャイザーに委託でき、またブランド力も営業的に魅力ということがあるからでしょうか。でもハウスメーカーならいざしらず地場の工務店なら、顧客に応じて自由に工法を提案してほしいものです。
 
 
パッシブ換気とアクティブ換気
 
   


断熱性と気密性を高めた家では、効率よく換気するように設計することが出来ます(> FAQ > 息苦しい?高気密高断熱

暖まった空気が上昇するという自然の原理を用いて、屋内の汚れた空気を家の最上部に設けた排気口から出し、出た分の新鮮な空気を吸気口から取り入れるしくみが、パッシブ換気(自然換気)です。これには換気扇やファンなどの人工的な動力は使いません。自然の力で換気します。でも自然力がたよりですので、季節や風向き敷地条件によって、換気量が違ってきます。でも、もしビルなど不特定多数の人が利用する建築物では換気量の定量を確保しなければいけませんが、住宅であれば換気量のある程度の変化は受容できます。
家が息をするというイメージです。空気の流れは人に感じないほど微妙な動きなので、家のつくり自体を入念に設計して工事をしないといけません。床下から天井裏屋根裏に至る換気経路に、外壁の内側や間仕切り壁内部などを使います。また換気のコントロールは、スイッチひとつでというわけにはいかず、排気口などのあけ具合を季節や時刻によって人が調節するようになります。

パッシブ換気に対して、換気扇やファンを使う方法をアクティブ換気(機械換気)といいます。24時間換気や熱交換機換気、OMソーラーなどもアクティブ換気です。アクティブ換気は、人工的な動力を使って強制的に空気を動かしますので、季節や風向き敷地条件などには影響されず、スイッチひとつで一定量の換気を確保することができます。ただ、しくみ上、空気が集中する部分にどうしても埃やゴミが詰まりやすく掃除が欠かせません。あるメーカーの追跡調査によるとアクティブ換気住宅購入後1年間に換気口の掃除をしたことがある世帯はわずか1%だったという結果があります。アクティブで、吸気口に埃が詰まると換気は機能せずすぐ換気不良になってしまいます。

パッシブ/アクティブともに、まったく人の手を借りずにはいきません。季節や時刻によって両方を使い分ける方法もあり、<ハイブリッド換気>といいます。パッシブで換気量が足りなくなる季節や時刻はアクティブとすることで、できるだけ電気も使わないし、空気の集中も少ないので掃除頻度も減らすことにもなります。
家づくりにはいろいろな工夫ができます。あなたの「わが家」にもっともふさわしい換気方法を考えてください。

 
 
24時間換気
 
   
屋内の換気を、専用のファンとダクトパイプの組み合わせた設備で、強制的に行い続ける方法をいいます。換気のコントロールは、一箇所のコントロールスイッチで行います。セントラル換気と呼ぶ場合もあります。
もっとも一般的な方法は、各室天井に取り付けた排気口から、天井裏等に設置した排気ファンへダクトをつないで、汚れた空気をいつも送り出す方法です。新鮮空気は各室に設けた吸気口から自然に入ってきます。天井裏のファンから、騒音が室内へ漏れ出ないように工夫されています。
屋内の涼しい空気や暖かい空気をそのまま捨てるのがもったいないとか、各室に直接外の冷たい空気が入ってくるのを防ぎたいときには、排気の熱を吸気へ移して空気だけを入れ換えるという全熱交換機を用いる場合もあります。
また、天井裏に強制ファンをつけるのではなく、各室にセンサー付きの換気扇を設ける方法もありますが、これは24時間換気とは呼ばれていません。一般的に工事費は安くなりますが、ファンの騒音は避けられず屋外気温がそのまま屋内へ入って来ます。

いずれにしても、24時間換気は、換気システムとして吸排気口やダクトなどと一式で販売されることが多く、一般に高価です。また空気の流れが集中しますので、埃やゴミが各部に溜まりやすく、メンテナンスは欠かせません。
一方では、騒音が皆無でないため、ふだん家にいることが多い主婦の方には電気の無駄遣いのように思えてしまうことから、スイッチを切ってしまうことが多いようですが、24時間換気に頼っている家ではスイッチOFFは換気不良に直結します。ずーっと動かし続けることが基本です。
 
 
二重通気工法
 
   
高気密高断熱住宅で、外断熱材の外側と内側に通気層を持ち、それぞれが独立して外壁内部の空気対流や湿気の放散を行うよう工夫された工法です。
断熱材の外側の通気層は、雨水の浸入や内部結露による湿気を放散し、外壁表面の日射による熱気も排出する機能を持っています。断熱材の内側の通気層は、床下と屋根裏につながって空気を循環させて室内の温度変化を押さえる役割をします。

建材メーカーによっては、ソーラーサーキット/エアサイクル/エアパスという呼び名が付けられています。断熱材や吸排気口、屋根裏換気扇などの建材や設備をまとめて、フランチャイズ工法として商品化されています。各社により細部に違いがあるようですが、基本的なしくみは上に見たとおりです。

二重通気とはいっても、外側の通気層で熱気や湿気を排出するしくみは、ほぼどんな住宅工法でも採用されつつあるものです。内側の通気層は、外壁から伝わる屋外の高熱を屋根裏から外へ出すことで、特に夏に効果を発揮し、冬には床下と屋根裏の空気の循環の経路として使われますが、この空気循環は通常のパッシブ換気住宅でもおなじです。
フランチャイズの二重通気工法では、冬に床下通気口を完全に遮蔽してファンを用いて屋内の空気を強制循環させます。このことで床下を蓄熱層として利用するのですが、このとき床下への吸気をシャットアウトするために、別の室内換気が不可欠となります。通常のパッシブ換気では冬には最も効率よく自然換気ができるのですが、この工法では冬でも動力が必要です。結果的に年間を通して、24時間換気等の換気設備を併設することが多いようです。
 
   

 

<< このページの先頭へ

 



ホームページトピックス 家づくり事典 故障と改修
サイトマップ Eメールabout us
Copyright © 2000-2003 iezukuri.com