コーポレートロゴ【60x60】
性能保証

今般、欠陥住宅についての不安を、多くの方が感じています。その予防策のひとつとして「性能保証」が知られるようになりました。しかし実は、住宅の品質や性能について第三者がチェックする方法としては、これまでも類似の制度や法律がありました。<設計監理><性能保証><性能表示><確認検査><金融公庫検査>等々です。
あまりにも制度が多すぎて、建主さんにとってはその違いや利用方法などがわかりにくくなってしまっているようです。
 


性能保証と制度の経緯

 
 
そもそも、欠陥問題が生まれる素地には、契約時に何をどう注文するかの準備の問題(> 売買契約と請負契約)と、注文した工事の建主の検収の問題(> 工事監理)とがあります。いずれもこれまで欠陥住宅対策が抜け落ちていたというのではなく、建築基準法と建築士法により設計事務所の仕事として、これまでも法律で規定されてきたことがらなのです。
しかしながら、国内の住宅着工全数のうち、工事をしない専業業務として設計事務所が住宅建築に携わる割合が小さく、工事や販売を業とする会社が自前で監理をする割合が大多数であったため、工事における第三者監理が機能不全となり、工事会社の無責任な施工が、欠陥住宅として社会問題化してしまいました。
性能保証制度は、その問題解決の新しい方策として制度化されたもので、今では行政管轄の公的機関や、民間出資の株式法人によって運営されています。 その多くは、
「主要な構造部分における瑕疵(施工原因での故障)は、10年間保証」
「仕上げ材等の軽微な瑕疵は、部位毎に数年保証」
「保証期間に施工会社倒産の場合は保証会社が肩代わりする」
という内容です。つまり、瑕疵故障(欠陥)を対象としていますので、何が瑕疵なのかという公的な尺度が法的に整備(住宅の品質確保促進法<以下、品確法>)されたことが、この制度の普及の後押しとなりました。このように性能保証は、あくまで欠陥を対象しており、性能表示制度(次項)が行うような性能の内容やランク付けは行っていません。

よく似た制度に、完成保証制度があります。これは、工事請負契約後に当事者の施工会社が倒産した場合に、保証会社が変わりの工務店に工事を肩代わりさせて、工事を完成させるという制度です。性能の表示や欠陥対策は含まれまていません。
 
 
性能表示
 
    品確法により、前出のような瑕疵の状態の定義付けとともに、10年間の瑕疵担保期間をすべての新築住宅に当てはめることや、住宅の善し悪しを性能ランクとして数値化される制度が創設されました。平成14年10月からは中古住宅もその対象に加えられています。
この住宅の品質のランクづけが、性能表示制度と呼ばれます。これはすべての住宅に当てはめられる表示制度ではなく任意で、希望しなければ適用されません。そしてこの性能表示制度を利用するには、設計段階と工事段階にて指定検査機関の検査を受けなければ利用できません。これには数十万円が利用者負担となることや、手続きがかなり複雑であること、建築基準法による最低レベルの品質確保のほうが実用的であることなどから、平成13年4月からの制度発足以来未だ普及するには至っていません。
 
   


私見ですが、この性能表示制度による性能分類は、住宅をバラバラに解剖してしまって感があり、一般ユーザーが自分の家を総合的に理解しイメージするには向いていないのではないかと思っています。国は、性能の表現まで細かく規定するより、性能確保のための技術情報を研究して開示してくれるだけで充分です。日本全国のすべての住宅を、一律にランク付けしようとするところに無理があります。一軒一軒の住宅の性能については、建築士個人が責任を持つことが、かねてから建築士法に定められています。ひとつひとつの住宅には、ひとりの建築士が責任をもって建主に説明をし、いっしょに考えていくようにしないと、結果的に建主にとって解る家づくりは実現できないのではないでしょうか。(> 設計事務所

 
 
その他の性能確認制度
 
   
一般の住宅の品質について第三者がチェックする制度には、建築士法による建築士の<設計または工事監理>、あるいは上出の品確法による<性能表示>等以外にも、建築基準法による<確認完了検査>、住宅金融公庫による検査制度があります。
いわゆる建物の<確認申請>は、必ず建主が行政機関等に対して行わねばならず、その申請を受けた確認機関は、設計図書が建築基準法上合法であることを確認し<確認済証>を交付しなければなりません。また建主は、工事の完了時にも同様に、確認機関から、申請図面通りに建物が完成していることを現地にて<完了検査>をして確認した旨の<検査済証>を取得しなければなりません。行政によっては、骨組みの時点でも検査機関の<中間検査>を義務づけているところもあります。
また、住宅金融公庫の融資を受ける場合は、金融公庫指定の仕様となっているかどうかを検査員が<公庫融資住宅調査>することになっています。金融公庫以外の民間融資でも、行政の<検査済証>の取得を融資条件としているところもあります。
 
 
このように住宅工事の現場での第三者チェックには、似たような多くの種類があって本当にややこしい。その違いを、混乱のないように次に整理しておきます。
 
   


それにしてもこんなにややこしくしてしまったのは、一体誰の責任なんだろう。やっぱりもともとは社会に対する建築士の怠慢なんだろうなと、いつも自戒しているところです。

 
   


□ 建築士による<設計または工事監理>
住宅の工事実施に必要な設計図書を作成し、工事を照合し確認する業務。設計図書は建築士でなければ作成できず、その責任においてその設計は当然関連法規が遵守されます。同時に工事においても関連法規遵守がその建築士に課せられる義務となります。建売住宅を含めすべての住宅について、確認申請をした建築士(法人でなく個人資格者)が監理責任を問われるのです。以下の検査済証を出した行政等ではありません。

□ 確認機関の、<完了検査(確認検査)>
最低基準を満たしているかどうかを、行政あるいは国に認可された民間機関が、検査します。行政によっては完了時だけでなく屋根工事が終わった段階での中間検査を行うこともあります。これらの検査申込時には、建築士による工事監理報告義務を課せられますので、上記の工事監理に対する公的チェックともいえます。

□ 金融公庫の、<公庫融資住宅調査>
金融公庫が融資に際して、担保価値のある住宅となっているかどうかをチェックするものです。建築基準法上の最低要件に加え、公庫独自の建築仕様に準じた工事であることが必要になります。通常、上出の確認機関の検査員が確認検査と兼ねて行います。

□ 保証会社の、<性能保証検査>
工事完成後に瑕疵が生じた場合に、施工会社に代わって修補するために、工事が確認申請書通りに実施されているかどうかを、第三者チェックするものです。保証会社独自の保証なので、建築士の工事監理責任とは別に、保証会社が派遣する検査員が検査を実施します。

□ 品確法による<性能表示検査>
建築基準法による最低基準をベースに、さらに付加された性能程度について公的にランク付けするための検査です。設計段階で図面を検査し、工事においても国指定検査機関の登録検査員が検査をします。性能表示をすれば、瑕疵が起きたときの調停が簡便に受けられる特典がありますが、制度による図面と工事の検査が入りますので、どちらかといえば瑕疵の予防効果の方が期待できます。

 
   

 

<< このページの先頭へ

 



ホームページトピックス 家づくり事典 故障と改修
サイトマップ Eメールabout us
Copyright © 2000-2003 iezukuri.com